C O L U M N

昨年秋から年の瀬にかけ、英文HPをゼロから作成するプロジェクトのディレクションを担いました。ゼロという意味が、まさに言葉通りにゼロで、ドメインの検討や海外向けメールアドレスの検討から取得決定とともに、社内にほぼ英語の資料がなく、英語どころか日本語を1から構築するというユニークな案件です。私が見聞きする通常のパターンは、まずは日本語ホームページを作成し、もしくは既存の日本語HPをもとに英語版ホームページ制作を作るという。 会社沿革に至っては、社長にヒアリングをして初代まで遡り、社内でも過去の資料を探してもらいつつ日本語で原稿化したという状況でした。 往々にして国内市場へのメッセージとは若干変えた方がより望ましいため そっくりそのまま英語へ翻訳することはないのですが、それでも日本語版をもとに多言語化を進めるケースが一般的です。今回、確かに日本語HPはあったものの、社長とともに「現在の会社の状況を表しているとは言い難い」ことを確認し、日本語HPは参照せず英語版からのスタートでした。

今回のこのタイミングでの新規HP制作ディレクションは、私にとって大きなチャレンジでもありました。5年ぶりの本格的な全体ディレクションであり、世の中のトレンドや技術がどうなっているのか、そのキャッチアップを含めて自分が担いきれるのかという不安も当然見え隠れ。クライアント先の社長に対してもこのHPを大きな弾みとして 国内市場以外に可能性を見出してほしいという気持ちが非常に大きかったことも、緊張感とともにプレッシャーとなりました。さらに、案件として引き受ける際にまず確認する予算と納期ですが、 納期は、構想から3か月強、チームが固まってからは2か月だったか。 ここもまたタフな要件であったことは記しておくこととします。
納期もしくは予算にゆとりがあれば複数の進め方やチームが検討できるものの、今回は時間ばかりが過ぎていくピンチに見舞われそうになりました。なかなか決定できそうになかった肝心の制作を引き受けてくれるプロについては、最終的に友人のつてをたどることに。結果的に、様々なプロのスキルと目線の高さに触れ、支えられ、クライアントの想像を超えるものに仕上がったようで安心しました。一連の制作期間を通じて考えたチーム編成について私見をまとめておくこととします。

ディレクション案件を引き受ける際に、普段私が考えていることは以下のようなことです;
・クライアントは何を望んでいるか。
・何を満たすべきで、どこまで膨らませるべきか。
・その案件は、何を要に据えるべきか。
・すでに存在している素材は何か、そこに手を加える必要性がありそうか。
・一度で達成できそうか、若しくは複数段階に分けて考えるべきか。
上記は非常に抽象的な視点ですがこの時に、常に「どんなチームを組むべきか」を並行して念頭に置いて 様々なケースを検討します。

私見ですが、プロジェクトの成功には関わる人の相性が非常に重要であると感じています。関わる人の志向性や雰囲気を、実はとても気にしてチームを検討します。それは直接的なクライアントとの相性とも言えますし、実際一堂に会するかどうかは別として横に繋がるメンバーが1つのチームになれるかどうかも想像します。知人や友人である場合には、 馴れ合わないよう程よい 距離感を意識し合える間柄であることはもちろん、逆に遠慮が出過ぎないか、お互いに心地よいと感じられるか。これらはすべて、プロジェクトに関わる個々人が意欲的に、ポジティブなマインドでスキルを提供してくれることがなんであれ完成品の質を引き上げることに直結すると過去の案件を通じて感じてきたためです。各々が日々様々な案件に同時並行で携わる中、思いをもってスキルを惜しみなく提供してくれたりリソースを割いてくれたり粘り強く対応してくれるか否かは、最終的には気持ちの部分で優先してくれるかどうかであると感じるに至りました。先日も別の案件で、「1割ほどのめり込んでいるかもしれませんが、まだ予算内ですよ」と言われたことがあり、パソコンの前で小さく頷きました。

複数の立場の人に関わってもらう場合には、それぞれの役割分担を明確にし、下位分担まで心がけ、クライアントには折々で説明と確認をします。 今回は撮影、翻訳(やりとりは2名だがバックにもう1名)、制作(やりとりは1名だがバックにもう2名)という3者。関係者が複数で且つはじめましての場合に発生しがちな、「自分がどこまで担うべきかと、モノを申していいのかという遠慮」に対するプロジェクトマネージメントの役割も強く意識しました。それぞれの担当者に対し、私自身の役割を伝え、通常どんな風に線引きをされているのかや今回どこまでを担ってほしいのか、どんな観点からのアドバイスが欲しいのか等も伝えます。
最終的に、どこの誰からの提案を優先するかはその時々で変わるため上記の進め方を心がけても曖昧さが残ります。しかしながら一方で、最初に決めた線引きにこだわりすぎると全体の質が下がります。今回も、要所要所で非常に的確な指摘、疑問出しや再検討をしてほしいというリクエストがありました。最終的に「ここはクライアントの第一印象で進めよう」と決定したこともあり、コーディネートに近い選択をした箇所も幾つかありました。ディレクターがどこまで強く意思決定を通すべきかも、1つの案件の中でも柔軟に対処すべきと私自身も感じられた案件でした。
あわせて、プロジェクトのスタート時点では想定しきれていなかった小さな検討事項や付与されるべき機能が、制作も半ばに差し掛かった頃に顕在化。あるあるではあるものの、予算と直結するためディレクションを担う立場としては小さな悔しさが残ります。今回でいうと、例えばCookie Policy。当初は一切念頭になかったものの、ふと気付けば海外サイトでは頻繁に表示されました。追加制作が納期にはまるか、そして当然予算を確認し、クライアントにはこちらの最終的な意見を含めて伝え、判断を促す。今回は特に、私自身に5年というブランクがあったこともあり、できるだけ客観的な意見にするためにHP制作会社や海外在住の知人に相談を。ふとした時に相談できる相手がいるというのは、個人で行う上で非常に重要であるとこの時にも痛感しました。

以前師事していたデザインディレクターが「キャスティングでうまくできた時点で自分の仕事の半分以上は終わったようなもの」と言っていた言葉を思い出します。今回は、ディレクションに加えて英文HPの構成を1から検討し提案としてとりまとめ、 元となる日本語の原稿をすべて担い、最終的に冒頭に表示させる英文メインメッセージを作成するところまでの実務を担当したためにそうも言いきれませんでしたが、それでもこの関わるメンバーのおかげで非常にスムーズ且つ気持ちよく着地した仕事になりました。ここをスタート地点として、この英文HPを通じて売上に繋げていく仕組みと動きは、これからです。

クライアント:土田酒造株式会社
https://tsuchidasake.jp/

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